FORUM PRESS vol.77(2016年11月)

FORUM PRESS vol.77(公益財団法人かすがい市民文化財団 2016年11月25日発行)の表紙写真プロジェクトに参加しました。

また、2016年12月よりJR春日井駅新駅舎に写真が展示されています。

 

「ゆっくりと 長い時間をかけて 遠くまで」

 高蔵寺駅のパン屋さんの前で待ち合わせをしていたときのことです。客の往来に合わせて扉が開くたびに、店の外にいるわたしのところまでいい香りが漂ってきました。途中のコンビニで買ったアイスコーヒーを飲みながら友人を待っていると、だんだんと背中のリュックサックにパンが入っているような気がしてきました。さっきこの店でパンとコーヒーを買ってからここへ来たのではないかと思えてきたのです。架空のパンの存在を確かに感じました。もちろん自分がパンなんて買っていないのはわかっているのですが、ないものによって満たされた気持ちになるという不思議な感覚でした。これが、わたしの最初の春日井の話です。

 些細なことですがとても印象的な体験だったので、このときのことを考えながら春日井に向かいました。このときの架空のパンのように、何か形のないお土産を持ち帰ることができたらいいと思いました。

 今回、勝川駅と高蔵寺駅を起点にして初めての場所を歩いてまわりました。高蔵寺駅からういろうの美味しい和菓子屋さんを目指して歩いて行き、次に勝川駅で下車して周りを散策して、地蔵川沿いを歩いて名古屋へと帰りました。

 カメラとまちのなかにあるいろいろな面とで、まちを捕まえて剥がし取るようなつもりで撮影しています。春日井を実際に切り取って持ち帰ることはできないけれど、たくさんの「架空の春日井」のようなものをお土産にすることができて、とても満足しています。ういろうもとても美味しかったです。